90Lゴミ袋400枚!!蓄積20年のゴミ屋敷清掃

作業カルテ

この記事は弊社Youtubeチャンネルにて2020年1月19日に公開した動画【【ゴミ屋敷】20年以上ため込んだ、玄関まで山積みの雑誌・新聞を丸ごと片付け】をもとに執筆した作業カルテです。これまで数100件以上のゴミ屋敷のご相談にお応えしてきた弊社に寄せられた、実際のご相談からゴミ屋敷問題の詳細に迫ります。

玄関のドアを開けると早速、這い上がって行かないと入れないくらいの高さに積まれたゴミ。

 

なぜここまで溜めてしまったのか。
この部屋でどのような生活をされていたのか。
そして 今、片付けようと思ったきっかけとは…

 

そんな疑問を持ちつつ駆けつけた、京都府のとあるマンション。片付けの様子をご依頼主様のインタビューと共に紹介します。

 

4・50代から増え始める、ゴミ屋敷問題

近年の社会問題のひとつとして挙げられるゴミ屋敷問題。

 

2021年12月、弊社が役所に勤務している方を対象に実施した「ゴミ問題の実態」に関する調査では、ゴミ屋敷の住人を年齢別で見たところ「70代以上」(45.7%)が最も多く、次いで「60代」(22.8%)
以下、「50代」(16.6%)、「40代」(8.3%)、「30代」(3.9%)と、年齢層が高くなるほど割合が高くなることが分かりました。

 

またどんな人がゴミ屋敷問題を抱えてしまうのかという質問では「一人暮らしをしている人」(57.1%)「物を捨てるのが苦手な人」(28.0%)、「定職に就いていない人」(23.0%)という回答が目立つ結果になりました。

【プレスリリース】ゴミ屋敷居住者の8割は50歳以上!「超」高齢化が招く深刻な地域問題の現状とは? より引用

 

この結果からは体力や判断能力の衰え、あるいは発病などはゴミ屋敷の要因のひとつになり得ると言えるでしょう。そして、高齢者の一人暮らしが年々増加する日本において、ゴミ屋敷問題は今後より一層深刻化していくことが懸念されます。

 

YouTubeチャンネル 関西クリーンサービス|KansaiCleanService

 

「すぐに片付けてほしい!」ゴミ屋敷住人からの依頼とそのワケとは

ご依頼いただいたのは60代の男性。今回、片付ける部屋にはもう30年近く一人で住んでいるのだとか。

 

―玄関からお荷物が積みあがっている状況ですが、いつ頃から溜まり始めたのでしょうか?

「1995年くらいに入院しているので、そこからちゃうかな?」

「入院して、汚れはじめて、みたいな…」

 

気さくな人柄のご依頼主様は明るく答えてくださいました。

 

しかしその明るさとは裏腹に、病気・入院をきっかけにして退院後はそれまでのように片付けや掃除をこなすことが難しくなていたようです。その結果、20年分の本や衣類、日用品その他諸々の荷物を溜め込んだゴミ屋敷ができあがりました。

 

ではなぜ20年たった今、片付けをしようと依頼されたのか。その答えはなんと”水漏れ”でした。

 

ご依頼主様はさらにこのように話されています。

「片付けようと思ったのではなくて、水道の水漏れが出て下の階の人に迷惑をかけて、大家さんから ”至急、部屋に入らせて欲しい” ”いや、入ったって無理ですよ”という話になって。

自分でやろうとはしたけど、あんな状態なので結局、業者に頼みますという事で今に至りました。」

 

1か所の水漏れが大家さんに現状を知られ、部屋を片付けるきっかけとなったのです。

 

早く大量の荷物を片づけて水漏れを修復しなければ最悪の場合、退去を迫られることになるかもしれません。ご依頼主様にとっては一刻を争う事態に、弊社へ「早急に片付けてほしい」とご依頼いただくこととなりました。

 

床が見えているところがない!ゴミ屋敷の状況

部屋はマンションの3階。間取りは2DK。一人暮らしには十分な広さと言えるでしょう。

 

しかし、玄関の扉を開けると入口から雑誌・新聞がひざ上ほどの高さまで積み上がり、その山を踏み台にしなければ部屋に入ることができない状況でした。地層のように積み重なった雑誌と新聞がゴミ屋敷ができてからの年月を物語っているようです。

 

さらに部屋の奥へいくほど山は高くなり、洗面台、浴室に至るまでどこを見回しても足の踏み場はなく、ほとんどの部屋が床から天井の半分以上の高さが物で埋め尽くされていました。奥に進もうとしても足を取られて何かにつかまらなければ進むことができません。

 

キッチンや浴室、トイレはとても使用できる状態とは言えず、これでは水漏れの場所もわかりません。ご依頼主様はこの部屋でどのような生活をされていたのでしょうか。

 

「日中は職場だからいいけど、それ以外も食事は外で済ませて風呂とかトイレは近くのジムで。部屋では寝るだけ」だったのだそうです。

 

ご依頼主様の話では、水漏れが無ければ片付けるきっかけはなかったかもしれませんが、なんとかして普通の暮らしを取り戻してほしいという思いで作業を開始しました。

 

ゴミ屋敷清掃の進め方。

現場の間取り図

 

玄関から大量の荷物で埋め尽くされ、室内に入ることもままならないようなゴミ屋敷では、まず搬出経路を確保するため玄関から徐々に作業範囲を広げて進んでいきます。今回のお部屋の場合は玄関→洗面所→台所→和室という流れです。

 

作業人数は5名。まずは一人が部屋の中からゴミの山を崩し、一人は入り口で崩れたゴミを分別して袋詰めします。部屋の中に少しの余裕ができたところで中で作業する人数を増やして作業スピードを上げていきました。

 

溜まった袋ゴミを建物の外へ搬出するスタッフも配置しなければなりません。今回はエレベーターが無いマンション3階での作業です。階段を往復するため、1名+補助1名を配置します。

 

分別、袋詰め、搬出と、繰り返し作業することで徐々に範囲を広げていくと…洗面所のあたりから腐敗臭のような異様な臭いが漂ってきました。洗面所のゴミを片づけていると、下から水気を含んだ新聞紙や雑誌が出てきたのです。どうやらここが水漏れの原因と思われます。

 

新聞紙などを取りぞのいてしまうといくらか臭いはましになり、続けて作業を進めていきます。

 

実はこの現場は、あまりの物量の多さのため二日間の作業を計画していました。1日目は玄関周りから台所と洗面所、浴室、それから右側の和室の1/3程度が片付きました。

 

夕日が差し込むようになった、1日目終了時点の台所まわり

 

床が見え、日光をさえぎっていたゴミの山が無くなり夕日が差し込んできました。この段階でまだ台所の奥にある和室は手つかずでしたが、おおよその目処が立ったところで2日目にバトンタッチすることに。

 

当社では多くのゴミ屋敷清掃で作業現場にパッカー車と呼ばれるゴミ収集車を手配しています。これは、作業効率を上げて早くゴミ屋敷を片づけることにつながります。

 

しかし手配するパッカー車を拘束できる時間は限られているため、燃えるゴミなどパッカー車に積み込めるものを優先して運び出すことは、ゴミ屋敷の清掃で気をつけなければならないことのひとつともいえるでしょう。1日目の進捗が思わしくないと2日目に大量に残ってしまい、パッカー車に全て積み込み切れなくなる可能性が出てきます。

 

清掃スタッフは目に見える明らかなゴミをとにかく袋に詰め、何度も何度も黙々と作業を繰り返します。そして1階に搬出されたゴミは危険物などが含まれていないかの最終チェックを経て次々とパッカー車に積み込まれていくのです。

 

このようにして、2日間の作業は順調に進み、20年分の埃と不用品をきれいさっぱり片づけることができました。かかった時間はおよそ12時間。

 

玄関しか照明を使用できなかったので天気の良い日中の作業で終えることができてよかったと思います。臭いも洗面所だけで虫もほとんど見かけなかったのが幸いです。

 

作業終了時の様子

 

ゴミ屋敷はゴミばかりではない。要る・要らないを仕分ける片付けのヒント

 

20年蓄積されたゴミ屋敷。当然のことながら、ゴミの山の下には20年以上前のモノが埋っていました。今回は必要品と不用品の仕分けも大事な作業のひとつ。残すものは主に以下の4点です。

 

  • ・普段使用している必要最低限の衣類や日用品
  • ・新品のモノ
    ・貴重品
    ・高価なモノ

 

また、多趣味なご依頼主様はカメラ機材、音響機材、CDやレコードDVD、雑誌、本など様々な品物をコレクションされていました。大切な品物は確認を取りながら残すか処分するかを決定して片付けを進めていきます。

 

このようなコレクション品は特に処分するかどうかの判断が難しいものですが、ご依頼主様に話を伺っている中で「悩むモノは処分しよう。また増えるだけだし」という言葉が大変印象的でした。

 

好きで集めてきたものを手放すことには言葉にできない思いもおありだったでしょうが、物が増えすぎてしまって収拾がつかなくなった今となっては、いろんな思いを呑み込んで片付けることを決意されたのだと思います。

 

ゴミ屋敷を片づけるには決断することも大事なことだと気づかされた作業のご依頼でした。

 

自分自身や身近な人がモノを溜め込んでしまったら

 

今回依頼いただいたゴミ屋敷は一人暮らしであり、病気を患っていらしたことが要因のひとつでした。しかし、この背景にはもっと様々な要因が絡み合っているのではないでしょうか。

 

部屋には収納に入りきらないほどの本や雑誌、DVD、カメラなどが多くありました。ご自身の趣味の品物を大切にされていたのだろうと思われます。

 

しかし病気をきっかけにして整理整頓や片付けが困難になったとき、コレクションだけでなくあらゆるモノを溜めてしまうようになり、生活スペースを圧迫するほどの荷物が溢れてしまいました。

 

収集癖からゴミ屋敷(あるいはモノ屋敷)になってしまう事例は珍しくありません。

 

20代~30代の若い世代では問題ないと思うかもしれませんが、いずれ歳を重ねて整理整頓や片付けの判断が鈍ってきたときには、もう自分自身では手が付けられない量になってしまっているのです。

 

もし、ご自身が物を集めるタイプの人だったら、一度身の回りを見回してみてください。好きなモノや日用品が生活スペースを圧迫していませんか?

 

身近な人が思い当ったら、手を差しのべてください。コミュニケーションや人との繋がりが重要な解決の糸口のひとつになることがあります。

カルテNo.

0002

地域

京都

作業内容

大量の不用品回収

作業人数

5名×2日

手配車両

3トンパッカー車2台、2トントラック2台

使用したゴミ袋

90L400枚

料金

450000円(税別)