飼い主が孤独死 残されたペットたちは極限状態で生き延びていた

作業カルテ

飼い主の孤独死

弊社の代表取締役であり、15年以上も特殊清掃に携わってきた、亀澤範行代表。

愛犬家でもある彼が、忘れられない現場があります。

 

愛犬2匹を遺し、飼い主が突然死した現場。

ある日主人を失った犬たちは、“ある選択”をして生き抜きました。

生きるために、彼らが本能で取った行動。その現実が亀澤代表の心に重くのしかかりました。

 

 

64歳で突然死。愛犬家だった故人

作業前の現場の状況

 

今回の現場は、とある賃貸マンションの一室。故人は享年64歳の男性です。ご遺体は死後3週間経って発見されました。10年以上前から一人暮らしをしており、愛犬2匹とともに生活を送っていたそうです。

 

ご依頼主は、故人の娘さんです。現場の状況を見て「おそらく特殊清掃が必要だろう」とお考えになり、弊社にご依頼されました。ネット検索で見つけた弊社のホームページを見て、「テレビの取材をたくさん受けていて信用できそうだし、頼むならこの会社がいい」と思ってくださったそうです。

 

ご両親は10年以上前に離婚し、その際に娘さんも家を出たといいます。故人は愛犬たちを心の拠りどころとし、毎晩一緒に寝るほど溺愛していました。

 

室内の様子

蚊取り線香が散乱している

亡くなられたのはダイニングに続くキッチンの床です。現場は、犬たちによって荒らされた形跡がありました。

 

蚊取り線香が床に散らばり、故人の衣服や、椅子のクッションなどが散乱している状態。犬たちが歩き回っていた箇所は、床が少し黒くなるほど汚れていました。

 

ご遺体の腐敗が進んでいたため、体液や臭いが強く残り、10匹以上のハエが窓際で飛び回っていました。

ハエが飛んでいる

ベッドのある寝室も荒れており、至るところに糞尿が散らかっています。

汚れたベッド

唯一荒らされていなかった和室には、ペット同伴の旅行雑誌が落ちていました。ダイニングの壁にも、愛犬の写真がたくさん貼られたコルクボードが。

愛犬の写真

故人がいかに犬たちを愛していたのかが伝わってきます。

 

清掃の様子

消毒剤を噴霧

まず噴霧消毒してから、キッチンに残った体液の滅菌と除去作業を行いました。

「サニティア」という粉状の緊急汚物処理剤を、固まってしまった体液全体に振りかけていきます。

体液の消毒

次に「スクレーバー」と呼ばれるヘラ状の道具を使い、薬剤ごと体液を取り除きます。

スクレーパーで削ぎ取る

作業を進めていくと、新事実が明らかになりました。

こびりついた体液の中から、スマートフォンが出てきたのです。

体液の痕から出てきたスマートホン

最期に肌身離さず持っていたのでしょうか。もしくは、倒れたときにご自身で救急車を呼ぼうとしたのか。どこかに通報しようとした可能性も考えられます。

 

スマホには、犬の毛と体液が付着していました。

愛犬たちは主人のすぐそばで、その最期を見届けたのかもしれません。

発見したスマホ
(発見したスマホも清掃)

 

体液の処理後、仕上げに液剤を使って床を磨いていきます。

フローリングの清掃

作業開始から約3時間後、体液の清掃が完了しました。遺品整理を含め、トータルの作業時間は約7時間(※作業員5名)です。

作業後の状態

ご依頼主である娘さんに清掃後の現場を確認していただきました。

 

「跡が残るのかなと思っていたんですけど、『どこにあったのかな?』というくらいキレイになっているので、びっくりしました。父はもともとキレイ好きではなかったんですけど……やっぱり、ちゃんとキレイにしたら、本人は安心するのかなって気がします」(娘さん談)

 

発見当時の犬たちの様子

質問に答えるご依頼主様
(インタビューに答えてくださった娘さん)

 

発見当時の犬たちの様子についても、娘さんにお聞きしました。

 

「とにかく外に出たがり、落ち着きがなかったです。『開けてくれ』といった様子で玄関のところまで来ていて、ドアを開けたらそのまま外に出ていきました」

 

その後病院へ連れていき、娘さんの自宅で保護したそうです。

保護された犬たち

「父が亡くなる瞬間まで、一緒にいたんだなと思うと……家の中で、ワンちゃんに看取られながらだったのは、父にとっていちばんいい形だったのかなと思います。もし父が入院していたら、病院ではワンちゃんに会えないですし」

 

故人の死因は、心疾患と推定されています。娘さんいわくヘビースモーカーで、以前から病状は出ていたそうです。

タバコの吸い殻
(部屋に残された大量の煙草の吸殻)

 

「(入院の話があっても)犬たちが心配ですぐ帰っていたのかな」と娘さんは語ります。治療よりも、愛犬たちとともに過ごす時間を優先したのかもしれません。

 

犬たちはどうやって生き延びたのか

作業中の様子

ところで、ご遺体が発見されるまでの3週間、犬たちはどうやって生き抜いたのでしょうか。

水もエサも尽きたなか、彼らが取った行動は、非常につらく悲しいものでした。

 

ご遺体発見のきっかけは、近隣住民からの苦情です。「犬の鳴き声がうるさい」と、管理人さんに連絡があったといいます。様子を見に来た管理人さんは玄関のベルを鳴らしたものの、誰も出てこないことを不審に思い、警察を呼んだそうです。

 

警察が部屋の中に入り、ご遺体を見つけました。愛犬たちは、故人のご遺体を食べて生き延びていたそうです。

 

それを知った亀澤代表は、現場で言葉を詰まらせました。

 

「飼い主の気持ちを考えたら……どうなんでしょうね。僕だったら、ワンちゃんが生きてくれるんだったら、食べられてもいいかなと思います」

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地域

奈良県

作業内容

除菌・消臭、体液痕の除去、フローリングの洗浄

作業人数

5名

作業時間

約4時間

料金

200,000円