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ゴミ屋敷と聞くと、多くの人は「整理整頓が苦手な人の家」と思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、深刻な原因が隠れていることがあります。
そのひとつが、「ためこみ症」です。
ためこみ症とは“物を捨てられずに溜め込んでしまう心理的な障害”で、単なる性格の問題では説明できない病気です。ためこみ症が進行すると部屋の中がモノであふれかえり、いわゆる「ゴミ屋敷」と呼ばれる状態に発展することがあります。
本記事では、ためこみ症の原因や症状、そして具体的な対策について、医師の監修のもと詳しく解説します。なぜ物を捨てられないのか、その背景にある心理的な要因や治療法、家族がためこみ症になってしまった場合の対処法についてご紹介します。
あなた自身や大切な人の生活環境を改善するためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を監修した専門家
精神科医 益田 裕介 氏
早稲田メンタルクリニック 院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。
防衛医大を卒業後、防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院、埼玉県立精神神経などを経て、早稲田メンタルクリニックを開業。一般向けに、わかりやすく、精神科診療について解説するYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営している。
この記事の執筆者
関西クリーンサービス 編集部
大阪・京都・奈良を中心に近畿一円でゴミ屋敷片付けや遺品整理、特殊清掃のサービスを提供。遺品整理においては受注件数5年連続関西No.1(※)の実績を誇り、片付けのプロとして日々さまざまなご依頼にお応えしています。
※東京商工リサーチ2019年~2023年「遺品整理業」調査において
ゴミ屋敷化を引き起こす「ためこみ症」とは
ためこみ症とはどのような精神障害なのか、その定義や症状、原因について具体的に見ていきましょう。
ためこみ症の定義
ためこみ症(Hoarding Disorder, HD)は、不要な物品を過剰に集め、モノを捨てることに極度の不安や苦痛を感じる精神障害です。以前は強迫性障害の一種と考えられていましたが、2013年に発表されたDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)からは、独立した疾患として認められました。
DSM-5によれば、ためこみ症の患者は「実際は価値がないにもかかわらず,所有物を捨てたり手放したりすることが持続的に困難」であるとされています。その結果、居住空間がモノで埋め尽くされ、日常生活に重大な支障をきたすことが多いと定義されています。
ためこみ症の症状
ためこみ症の主な症状は、以下の4つです。
- 不要なモノを大量に収集し、捨てることができない
- モノが積み重なり、居住空間の機能が著しく損なわれる
- モノを捨てる際に強い苦痛や不安を感じる
- 収集したモノに対する過剰な執着心
ためこみ症患者の約80~90%は,物品の購入を過剰に繰り返すといわれています。また、「動物ためこみ(Animal Hoarding)」もためこみ症の一種で、犬や猫などの動物を多頭飼いし、世話をせずに放置してしまうといった特徴があります。
病識(※病気であると自覚していること)の程度は人によってさまざまで、なかには「信条があってためこみ行動をしている」と認識している人もいます。しかし多くの人は自覚がありません。
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ためこみ症は生活を困難にするだけでなく、当事者の社会生活や人とのつながりにも影響を及ぼしてしまうよ。家が散らかっていることに対する恥ずかしさなどから、家族や友人などを遠ざけてしまいがちだよ
ためこみ症の原因
ためこみ症の原因は複雑で、「遺伝的要因」「環境的要因」「心理的要因」など、さまざまな要因が絡み合っていると考えられています。
[遺伝的要因]
ためこみ症の患者の約50%は、親族にも同じ症状を持つ人がいると報告されています。また、特定の遺伝子がためこみ症の発症に関与している可能性や、遺伝的な要因が性格形成に影響を与え、それがためこみ症の発症に寄与する可能性も指摘されています。
[身体的要因]
脳の機能異常として、前頭葉の機能障害が関係している可能性があります。
[心理的要因]
過去のトラウマや、家庭や職場などでの強いストレスが、ためこみ症の発症に関与することがあります。
[環境的要因]
幼少期に貧困や物資の不足を経験した人は、物を捨てることに対する不安感が強くなり、ためこみ症を発症しやすいとされています。また、孤立した生活環境や、支援が少ない環境もためこみ症のリスクを高める要因となります。例えば一人暮らしでサポートが少ない場合、物をため込みやすくなることがあります。
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心理的要因×環境的要因や、身体的要因×環境的要因など、いろんな要因がかけ合わさっているんだ
ためこみ症の診断と治療
ためこみ症の診断にはいくつかの基準があり、診断が下りると「認知行動療法」や「薬物療法」といった治療が用いられます。その内容について見ていきましょう。
診断基準
DSM-5に基づき以下の診断基準を満たす場合、ためこみ症と診断されます。
- 持続的な物品収集
- モノを捨てることに対する苦痛や思い込み
- 生活空間の圧迫
- 他の精神疾患との区別
※症状が他の精神疾患や医学的状態(例えば強迫性障害や重度のうつ病)によるものではないこと。
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診断の際には、物品の収集動機や捨てる際の感情、生活にどのような影響があるかなどが聞き取りされるよ
治療法
ためこみ症の治療には、主に以下の方法が用いられます。
認知行動療法
認知行動療法は、ためこみ症にもっとも効果的な治療法とされています。患者のモノに対する認知を変え、捨てることへの不安を軽減させます。モノをため込まないようにするための行動パターンを学ぶことを目的としているため、物を一時的に預ける「行動実験」や、捨てる際の感情の記録などが行われます。
薬物療法
一部のためこみ症患者には、抗うつ薬(※特に選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が有効とされています。不安や抑うつの症状を軽減し、治療への意欲を高める助けとなります。
ただし、薬物療法だけでは十分な効果が得られないことが多く、認知行動療法と併用することが推奨されています。
環境支援
家族や友人のサポートも、治療において重要です。また、専門家による訪問治療や地域支援プログラムも効果的です。
ためこみ症の治療は長期にわたることが多く、持続的な支援と適切な治療が求められます。早期の診断と介入が、生活の質の向上に大きく寄与するため、疑わしい症状が見られる場合は専門家への相談がベストです。
ためこみ症によるゴミ屋敷化の実例
実際に弊社にご依頼があった現場の中から、ためこみ症に該当すると思われる事例をご紹介します。
実例① モノで空間が圧迫され、住人は玄関で生活…
1Kのお部屋にびっしりとモノが詰まった現場です。玄関を開けると、大量の本とパスタや米などの備蓄食料品が1m20cmほどの高さに積み上がっていました。その先には本がさらに高く積み上がっており、これ以上は進めません。部屋の間仕切りがどこかもわからない状態です。
住人の方は玄関に残されたわずかな空間で生活しており、玄関ドアは皮脂のようなものでサビていました。おそらく常にドアに身体が当たっている状態で生活されていたのでしょう。
作業を進めながら部屋の状態を見ていくと、廊下から居室に至るまで、スチールラックがずらりと並んでいました。どれもみっちりとモノが詰まっています。
ただしゴミ出しはされていたようで、整理整頓が苦手という印象もありませんでした。
関西クリーンサービス
ゴミ屋敷というよりも、モノ屋敷と言うべきかな。ひたすら本と備蓄食料を集めていたのかも…
実例② 本で埋まった部屋
「引っ越しをするので物を運び出してほしい」とのご依頼をいただいて伺った現場です。玄関ドアを開けると、ドアの半分の高さまでゴミが積み上がっている状態でした。
ご依頼主さまは無類の本好きで、本を集めるうちに片付けができないほど生活空間が圧迫されていったそうです。「どんどん増える本を積み上げていくうちに崩れてきてしまい、片付ける余裕もなく、気が付いたときにはゴミ屋敷化していた」と語ってくれました。
本以外にも荷物が多いこと、ゴミの分別など片付けが苦手なことから、おそらくためこみ症の傾向があったのではないかと思われます。
その結果、収集した本とゴミが同じ空間にごちゃ混ぜに積みあがったゴミ屋敷と化してしまった事例です。
家族がためこみ症の場合の対処法は?
家族がためこみ症の場合、どう対処するのが適切なのでしょうか。ここではコミュニケーションの取り方とゴミ屋敷化を防ぐ方法などを解説します。
ためこみ症の家族への接し方
ためこみ症の家族に対しては、理解と共感が不可欠です。ためこみ症は精神的な障害であり、単なる「片付けられない状態」ではありません。家族として、まずはその苦しみを理解し、寄り添うことが大切です。
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批判的な態度や片付けの強要は逆効果!症状を悪化させる可能性があるよ!
ためこみ症の改善には専門的な治療が必要です。ただしいきなり受診を勧めても、自覚がない人は「病気ではない」と拒否反応を示すことがあります。家族と接する中で、タイミングを見ながら専門家の支援を受けるように促しましょう。
ためこみ症によるゴミ屋敷化を防ぐには?
ゴミ屋敷化を防ぐためには、日常生活の中での予防策が重要です。
定期的な整理整頓
ゴミ屋敷化の予防には、定期的に整理整頓を行い、不要なモノを処分する習慣をつけることが大切です。しかしためこみ症の人にとっては苦痛を伴う行為となるため、家族が協力してひとつずつ進めなければなりません。
ルールを決める
家族と同居している場合、物を購入する際や手放す際のルールを設定してみましょう。例えば、「1年間使わなかった物は捨てる」など具体的な基準を設け、整理するときは本人の様子に注意しながら一緒に行ってみてください。
片づけ業者の利用
既にゴミ屋敷化していて家族だけでどうにもならないときは、清掃・片付け業者への依頼を検討しましょう。プロの手を借りていったん環境を整えることで、本人の意識が変わる場合もあります。
ためこみ症とゴミ屋敷に関するよくある質問
ここからは、ためこみ症とゴミ屋敷に関するよくある質問にお答えしていきます。
ためこみ症と「片付けられない人」の違いは?
ためこみ症と「片付けられない人」の違いは、モノへの執着心の有無と、捨てることへの不安や苦痛の有無です。性格や習慣などから片付けられない人は、単に整理整頓が苦手である場合が多く、モノを捨てることへの強い抵抗心はありません。
関西クリーンサービス
一時的に部屋が散らかっても自力で整理整頓できるなら、ためこみ症ではないよ!
コレクター(収集癖)との違い
コレクター(収集癖)は、趣味のフィギュアなど特定の物を集めることに喜びを感じ、その収集品を整理したり部屋に並べたりすることを楽しむ傾向にあります。物への愛着や執着といった部分では似通っていますが、ためこみ症の人はモノを集めることそのものに安心感を覚え、整理することができずに無秩序に積み重ねてしまいます。
ためこみ症は治るのか?
ためこみ症が完全に治るかどうかは個人差があり、治療の有効性については医師によっても見解が分かれます。主な治療法は薬物療法と認知行動療法ですが、本人の治療意欲が低いと効果が薄いとも言われているため、「治る」よりも「改善する」という表現が正しいかもしれません。
まとめ
ためこみ症は、家族にとっても大きな負担となり得ます。しかし、理解と共感を持って接することで、少しずつ改善への道を歩むことができます。もし、あなたの家族がためこみ症で悩んでいる場合、まずはその苦しみを理解し、寄り添ってあげてください。そして、専門家の助けを借りながら、一緒に解決策を見つけていきましょう。ためこみ症は一朝一夕には解決しませんが、持続的な努力とサポートが確実な改善をもたらします。
改善のためにプロに相談したい方は、ぜひ関西クリーンサービスへご相談ください。片付けの専門家であるスタッフが、前へと進むお手伝いをさせていただきます。
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ゴミ屋敷片付けの作業事例
ゴミ屋敷片付け
作業料金
200,000円
- 作業内容
- ゴミ屋敷片付け
- 間取り
- 1LDK
- 作業人数
- 3人
- 作業時間
- 6時間
- 住所
- 奈良県
- 作業項目
- 大量の不用品回収
プラン内容
お部屋がゴミ屋敷状態になってしまっているとのことで転居できずにいるため、片してほしいとのご依頼をいただきました。仕分け作業を行うのですが、紙が多く仕分け作業に時間を少し割いてしましたがスタッフ3名の6時間程で無事に完了致しました。
ゴミ屋敷片付け
作業料金
145,000円
- 作業内容
- ゴミ屋敷片付け
- 間取り
- 2DK
- 作業人数
- 3名
- 作業時間
- 6時間
- 住所
- 大阪
- 作業項目
- 大量の不用品回収
プラン内容
部屋は地層のように山積みになったゴミで埋め尽くされています。今回のゴミ屋敷はもう一つ困難なことがありました。それは大量のゴキブリです。ゴミをかき分け掃きだせばあちこちから出てくる、そんな状況でも殺虫剤を使いながら最後までしっかりと作業を行います。最後に全体に殺虫剤をまいて、簡易清掃を行いました。
ゴミ屋敷片付け
作業料金
187,000円
- 作業内容
- ゴミ屋敷片付け
- 間取り
- 1K
- 作業人数
- 4名
- 作業時間
- 6時間
- 住所
- 京都府
- 作業項目
- 大量の不用品回収
プラン内容
音信普通になってしまったご子息様のお部屋を片してほしいとのご依頼でした。お部屋はトイレまでゴミ屋敷の状態でペットボトルが山積みになり、たばこの吸い殻が大量にありましたので火事の危険性を感じたお部屋でした。スタッフ4名の6時間程で全ての作業が完了しました。